ある年の節分 | 作・えさん

今日は二月三日、節分だ。
江須隊には陽気な人間が多いため、イベントが大好きでことあるごとに大騒ぎしている。
江須隊隊室では節分祭りが行われていた。

ウボォー「鬼はー外!福はー内!」
蔵之介「やめろウボォー! お前の力で豆を投げるんやない! 当たったらとんでもなく痛いんやで!」
網走「蔵之介こそ投げるのをやめてくださいよ! 俺に当たるじゃないですか」
ウボォー「当たったらごめんなさい言うから!」
網走「うわああああん! 俺に当てないでくださあい!」
えす隊長「うるさいぞ~お前ら~」

えす隊長の布団からの注意もむなしく、隊員たちはキャッキャと騒いでいる。
今日は節分の日なので、「せっかくだから鬼を退治してみようぜ」というノリになり、豆まき大会が開催されたのだ。
もちろん鬼役もいる。

網走「ほらほら! 鬼は外ですよお~!」
蔵之介「てめえ! この野郎! 豆をぶつけるんやない!」
ウボォー「いいでぇ!もっとやるんや!」
えす隊長「きゃー蔵ちゃんこっち向いてー!」

網走の攻撃によってイラっときたのか、蔵之介は網走に向かって豆を投げ始める。
しかし蔵之介の投げた豆はことごとく網走にかわされる。

蔵之介「なんやあの変態の動き……気持ち悪いくらい的確に避けていやがる」

蔵之介は悔しそうにつぶやく。

網走「蔵之介さんが投げてくる位置さえわかれば避けることは簡単ですからね。俺は気配察知が得意なんで」
蔵之介「ちくしょう……。このままやと俺だけ豆を全部避けられてまう……」

蔵之介は作戦を考える。

蔵之介「よし、こうなったらアレを使うしかないな」

蔵之介は豆の入った袋の中から一つを取り出した。
そしてその豆を握りしめながら、網走の前に立つ。

網走「どうしたんですか?蔵之介さん」

蔵之介は無言のまま、拳を振り上げている。
網走はその行動の意味がわからず困惑する。
蔵之介は網走の顔を見つめたまま、口を開く。

蔵之介「網走先輩、あんただけは許さへん。絶対に許さへん」
網走「えっ?」
蔵之介「俺の大事な眼鏡を粉々にしやがって! 覚悟しろ!」

蔵之介は拳を思い切り振り上げる。

網走「えっ!?︎ちょ、ちょっと待ってくださいよ蔵之介さん!」

意外な展開に息を飲むえす隊長、ウボォーさん。

ウボォー「蔵之介があんなに怒ったところを見るのは初めてやわ」
網走「いやいやいや! 冗談ですよね蔵之介君!」
蔵之介「行くで網走!ぁあああ!!」
網走「やめてええええ!!!」

蔵之介は思いっきり腕を振り下ろし、網走に向けて豆を投げつける。
網走は必死に両手を前に出しガードの姿勢を取る。
次の瞬間、蔵之介の拳が網走の手に当たり、

網走「ぐぎゃあ!」
蔵之介「あっ……」

蔵之介が投げた豆は全て網走に命中。
網走は床に転げまわり悶絶している。

網走「痛い!いたいいたい!!手が腫れてますよおお!」
ウボォー「蔵之助の奴、結構本気で殴ったな」
蔵之介「やりすぎた!ごめん網走せんぱい!」

蔵之介は慌てて網走の元へ駆け寄る。

網走「いてててて、大丈夫ですけど、かなり痛いですねこれ」
網走「ほんまにすんまへん。今冷やすもの持ってくんで」
ウボォー「ぽんすけらしいわ」
えす隊長「zzz」

蔵之介は冷蔵庫にあった氷を持ってきて、ビニール袋に入れ網走に手渡す。

蔵之介「これで冷しとき。すぐ治ると思うで」
網走「ありがとうございます。でもどうしてメガネをかけてないのにメガネがどうのといってきたんですか?」

蔵之介「いや、なんかメガネの気持ちになってな…ほんとにえらいすんません」
網走「いえいえ、別に気にしてませんよ」
蔵之介「そ、そうですか」

蔵之介は安堵のため息をつく。

網走「それにしても、どうしてメガネをかけてないのにメガネがどうのといってきたんですか?」
蔵之介「?!?!?!網走先輩めっちゃ根に持ってますやん!!!」

その後蔵之介は一週間毎日食事当番をやらされ、エプロン姿を見に毎日隠岐がえす隊隊室に通い詰めたという…。








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