「俺犬飼いたいねんな」
「え?犬飼先輩がなんて?」
「犬飼ってない犬飼先輩の話今してないから」
いつも通り内容のない馬鹿話をしながら隊室でダラダラと過ごしていた二人。犬を飼いたいというワードに咄嗟に反応してしまった蔵之介だが、話題を軌道修正する。
「なんで急に犬飼いたい話すんねん」
「いや昨日さぁ……たまたまペットショップの前通りかかってさぁ……」
「うん」
「ガラス越しにコロンコロン転げ回ってめちゃくちゃしっぽ振ってくる子犬見たらもう俺……かわいすぎてしゃあなくてさぁ……」
「ふーん」
お前も割と犬みたいなやつやしな。やっぱ同族同士惹かれあったんか。と蔵之介は思った。
「お前も割と犬みたいなやつやしな。やっぱ同族同士惹かれあったんか。」
思ったので言った。
「は?誰が可愛い可愛い子犬ちゃんや」
「そこまでは言うてない」
蔵之介ふと気になる事を思いつき、清嗣に尋ねてみる。
「仮に犬飼ったとしたら名前何にするん」
「え?名前?」
途端に清嗣はうんうん唸り始めた。そこまで真剣に聞きたかったわけではないので失敗したなと思いつつ、蔵之介は暇なのでスマホを弄り始めた。
「決めた!」
大分時間をかけて悩んでいた清嗣がやっとそう声を上げたので、どんな名前が来るのかと蔵之介はワクワクした表情で清嗣の言葉を待つ。
「……ラブリー」
真剣な表情でそう答えた清嗣。
「ラブリー?!?!!!?!」
予想外の角度から抉るようなパンチを食らい、思わず吹き出してしまう蔵之介。
「アッハ!!!!アッハッハッハッハ!!!!!!!おまッ……!ラブリーて……!!!!!ッヒーーーーーー!!!!!!」
腹を抱えて大爆笑する蔵之介を見て清嗣はムキになって反論する。
「そんな笑うことないやんけ!!俺めっちゃ考えたんやぞ!!可愛いやろラブリー!!」
「おまえ……お前ネーミングセンスどないなっとんねん!!!!アッハッハッハッハ!!!!!」
清嗣の真剣な回答は蔵之介のツボにクリティカルヒットしてしまい、涙が出るほど笑ってしまった。笑い過ぎて呼吸困難に陥りそうな程である。
「お前そんな大爆笑することあるんや……」
親友の思わぬ一面を至極不本意ながら引き出した清嗣はとても複雑だった。
一頻り笑って落ち着いた蔵之介は目尻に浮かんだ涙を拭いながら清嗣に向かって言う。
「いや~ほんますまんすまん。あんまりにも予想外やったもんで」
「じゃあ何やったら納得すんねん」
「もっとなんか無難な名前かと思ってた」
「えぇ……それ褒めてんの貶してんのどっちなん……」
「褒めてるよ」
「なんやそれ」
「でもまぁあれやわ。よう考えたらラブリーも結構いいと思うで。ラブリー清嗣」
「おいやめろその呼び方」
ラブリーが心底ツボってしまった蔵之介はその後まぁまぁの頻度で清嗣をラブリー清嗣と呼ぶようになり、最終的にラブちゃん呼びになっていくのだった。
「名前からどんどんあだ名になるとかいうペットにやるやつやめろ!!!!
清嗣の怒号虚しく、蔵之介はしばらくラブちゃんと呼び続けるのであった。
終